さ妖ならば ごきげん妖

日常の中に隠れた妖怪いませんか

風で感じるすねこすり

 毎年夏になると映画『妖怪大戦争』を見るのが近年の恒例となっている。子どものころは『となりのトトロ』、学生のころは『学校の怪談』をよく見ていた。夏の冒険と不思議を感じられて好きだったのだと思う。

妖怪大戦争』は3作品作られてきたが、好みはやはり2005年の神木君主演のものだ。どう良かったかは今更私が語るまでもなく、夏に見たい名作映画の一つだと思う。

 

 『妖怪大戦争』の中にすねこすりという妖怪が出てくる。劇中では主人公のタダシ君と仲良くなる犬のようなデザインの妖怪だ。人気がある妖怪で他の妖怪作品にもよく出演している。

 このようにすねこすりは今日では比較的よく知られた妖怪だが、記録されている資料としては、岡山県の『井原市史民俗編』に次の通り記されている。

 井原市七日町の旧山陽道沿いに井領堂という辻堂がある。この付近は、昔は寂しい場所で、夜になると犬の形をしたすねこすりという化け物が出て、通行人のすねの間をすり抜けていたという。

 すねこすりは岡山県の妖怪であり、地方によっては股をくぐられると死んでしまうという恐ろしいものもあるようだが、一般的には上述のように、夜に通行人の足の間を通る妖怪、足に体を擦り付けて転ばそうとする妖怪という認識であると思う。

 

 突然ではあるが、私はこの妖怪すねこすりを感じたことがある。見たことはない。

 どこかは忘れたが、街中を歩いているときにふっと足元を犬か猫のような動物が走り抜けたような感覚を感じた。周りを見渡してもそのような動物はおらず、今のは何だったんだろうと道を戻ってみると、やはり足元に動物が走り抜けたような感覚がある。

 足元付近をよく見てみると、排気ダクトがあり一定の間隔で風が吹いたり止まったりしていた。正体を知ってみれば何のことはなく、ただの風の通り道であったわけだが、

膝下だけに瞬間的に風を感じると、案外動物がすり抜けたように感じるものだなぁと思った。昔の人も、夜暗いところで足元に風を感じてすねこすりを見たのかもしれないと考えつつ、しばらくその場ですねこすりを感じていた。

 さて今晩は一年ぶりに『妖怪大戦争』を見ることにしよう。扇風機を足元にセットし、麒麟ビールを飲むと私にもすねこすりが見えるだろう。